2013年9月23日月曜日

映画「立候補」を観た。

羽柴誠三秀吉、外山恒一、マック赤坂といった泡沫(ほうまつ)候補が、
敗れようと何度でも選挙に立候補する目的と原動力に迫るドキュメンタリー。
選挙に立候補するも、ほぼ負けるだろうと言われ続けてきた候補者たちの選挙活動を追う。
メガホンを取るのは、『フジヤマにミサイル』に続いて本作が2作目となる藤岡利充。
供託金を支払い、選挙活動を行い、奇異の目で見られながらも立候補する彼らが、
その理由を明かす様子は注目。
(YAHOO!映画より)

前々からこの映画「立候補」は観てみたいと思っていたのですが、上映館がひどく限られていたためその機会もなく、またいつかどこかでWOWOWとか邦画チャンネルとかで放映されるのを根気よく待つしかないのかなあと思っていました。そんな折、ツイッターで蛭田亜紗子さんがこの映画を観て、ラストは涙が止まらなかったと呟いていたので、ますます観たくなった次第なのですが、ちょうどそんな折(再度登場)、ある医療機器メーカーの新製品に関するadvisery boarding meetingというものに出席するために東京へ行くことになり、旅費・宿泊費すべてメーカー持ちというラッキーな機会に恵まれたため、これはまさに「立候補」を観る絶好の機会以外なんでもないと思い、東京東中野にあるポレポレ東中野まで「立候補」を観に行きました。
ポレポレ東中野は名画座のような劇場で、京都なら今なら京都シネマ、昔なら朝日シネマとかもっと昔なら京一会館のような感じの雰囲気がありました。「立候補」は午後7時からの上映1回のみで、観客は20人くらいだったと思われます。本当は一桁を予想していたのですが、意外に多かったです。
で、映画「立候補」ですが 、メインのキャラはマック赤坂氏です。主として前回の大阪府知事選の選挙模様を追っており、7人の候補者のうち、いわゆる泡沫候補といわれる4人にインタヴューをとり、選挙活動の模様を写しています。この泡沫候補が皆すべてかなり変わった人たちでした。皆がある意味、愛すべきキャラでした。で、マック赤坂氏以外の泡沫候補者たちはほとんど選挙活動なるものはしていないというのが現実でした。そもそも組織というものがなく、個人で立候補した人たちばかりでした。この人達のドキュメンタリーをもっと深く掘り下げていくととてつもない作品になりそうな予感があるのですが、彼らがそこまで取材に応じてくれるというのは難しいというのが現実のようです。
で、映画はこの泡沫候補の一人であるマック赤坂氏の選挙活動の様子を写していくのですが、これがまあメチャクチャです。マック赤坂氏は本当にメチャクチャで、真のアナーキストといえるような気がします。組織なるものはやはり存在せず、唯一の秘書はアルバイトで雇われた櫻井さんという中年男性ですが、この方もいろいろと癖がある方で面白い。そして、マック赤坂といっしょに選挙活動していくうちに人柄が変化していくのがわかります。なんかマック赤坂とともに人格が破綻していっているようなそんな気がします。でも彼には家族があり、子供があり、そんな姿もカメラは写していきます。
マック赤坂の息子は父親の貿易会社(といってもかなり小さい)の経営を引き継いでいるのですが、この大阪府知事選の時は父親のやっていることに不平不満を漏らしていました。が、その後の衆議院選挙東京地方区ではなんといつのまにか秘書みたいな役割になって櫻井さんと同様に狂っていってます(いや覚醒したという方が正しいのかも)。その姿があまりにすばらしい! 
大阪府知事選の最終日、橋下・松井陣営の街頭演説に自分の街頭演説カーで乗り付けて演説を始めるマック赤坂に向かって橋下・松井支持者たちからの強烈なヤジが浴びせられます。それでも必死に演説をするマック赤坂。なんなんだ、これは・・・・こんな場面、ニュースでまったく放映されてないぞ・・・思わず、マック赤坂はメチャクチャやけどこんなんやったらそのメチャクチャなマック赤坂支持するしかない!と叫びたくなりました。そして、これはすなわちわたし自身もがマック赤坂の狂気に巻き込まれてしまっているその証左にすぎないのでしょう。でもマック赤坂の情けないところは、橋下氏に演説の時間を与えてもらい、しまいに橋下氏の政策を支持するような演説をしてしまうというところです。あーー、このヘタレぶりがまたかわいいではありませんか。
次の衆議院選挙では、東京秋葉原で安倍首相の街頭演説に同じようにマック赤坂は闖入します。そして、集まった自民支持者の罵声を一身に集めます。そんな自民支持者に向かって挑発するのがあの息子なのです。なんじゃ、こりゃ・・・すごすぎる・・・。
負けを覚悟で望む戦というものが美しいものであるのは間違いありません。
ここに登場する泡沫候補者というのは真っ当な視線で評価するとメチャクチャな人たちに他なりません。でも、そんなメチャクチャな人たちにもなんというか言いようのない誇りと正当性と美しさが隠れているのです。
この「立候補」という映画を面白いと思える人は現時点では少ないと思います。いやでもそうでもないかもしれない。多いかも・・・面白いと思える人が多くなるとそれだけこの社会は成熟したものと言えるのかもしれません。現代の日本社会はそこまで成熟してきているでしょうか。
ちなみに映画の宣伝で、外山恒一氏や羽柴秀吉氏という泡沫候補についても述べられていますが、登場する場面はほんのわずかです。外山恒一氏の東京都知事選での選挙演説は秀逸でした。昔、YouTubeで初めて観たときはびっくりして爆笑しました。こんなすごいお笑いは今までに経験したことがないと思いました。これぞ真のお笑いではないかと思いました。糞吉本芸人たちには到達どころか幻視さえすることができないお笑いの頂点を観た思いでした。下に外山恒一氏の伝説の演説とマック赤坂氏の演説を貼っておきます。
「立候補」を観終わって、わたしは涙は出てきませんでした。それでもなにがどうというのかうまく表現できないぐちゃぐちゃした感動が頭のなかに渦巻いていました。それだけすばらしい作品でした。


          


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