2025年8月31日日曜日

iPS再生医療の終わりの始まり

  先日、iPS細胞を使用した網膜色素上皮細胞の網膜色素上皮不全患者への移植治療に対する先進医療への認可が却下された。
つまり、先進医療という保険診療を使った医療へダメ出しされたということである。自由診療であれば問題ないが、そもそもこの治療法は一治療法あたり数千万円かかるということであるから自由診療では難しいかもしれない。いや、それでもほとんど目が見えない患者が、日常生活が送れるくらいには見えるようになるのであれば自由診療で多額の費用を出してもそれを受ける人はいるかもしれないし、そもそもそういう治療なら先進医療へとサッサっと認可されると思う。この先進医療への認可を審議する段階で、申請者側は視力と視野による評価を加えていなかった。それはそれで仕方なく、なぜなら対象患者は視力も視野もほとんど計測不能な方たちであり、この治療によりその視力や視野が測定可能なくらいまでに改善するのならもちろん評価項目に視力/視野を加えるだろうが、残念ながら治療後も視力/視野は測定不可というレベルの改善?しかないのである。それでも施行者たちは患者たちは治療前よりも明るくなったと証言しているので治療効果はあるに違いないと言うが、これをどう評価するかが難しいのである。いわゆる「とんでも医療」の世界では、この患者たちの証言を唯一の拠り所として、客観的なデータなしで自分たちのとんでも医療を正当化するのであるが、そこに近いものを感じてしまう。もちろん、この治療法はとんでも医療ではない。しかし、こんなことをいっているようでは側から見ると「これはとんでも医療臭がする」と感じてしまっても仕方ないのである。 
であるから今回のこの先進医療却下は至極当然な結論であると思えるのであるが、申請者たちはまた機を改めて申請し直すらしい。その際は医学的にも皆を納得させるだけのデータを提出して、正々堂々と認可されんことを祈念する。
そもそもiPS細胞は山中先生が発見した日本独自のものである。であるからこのiPS細胞による再生医療を推し進めるのは国策として重要だとiPS再生医療関係者は豪語する。しかし、そもそもこのiPS細胞の発現率は当初4%ということでまさに奇跡に近いものであり、ちょっと間違えばスタップ細胞と同じ運命を辿ったかもしれないようなものである。いや、これは言い過ぎである。しかし、そのような細胞ゆえに培養に費やす手間及び費用は多大なるものでこれが今後もずっとネックになると思われる。ES細胞によりかなり発展してきた再生医療を日本政府はiPSに全振りすることにより国内のES細胞研究を駆逐してしまった。 その罪は非常に重い。
これまでiPSを用いた臨床応用は、世界初、合併症がないという二項目のみで評価され、バカマスコミで神に祭り上げられてきた。しかし、今、その機能評価というまさに治療の核心である評価項目に直面して、このiPS再生治療はごまかしの態度しか示せていないのである。網膜色素上皮不全症(そもそもこんな病名いつから出来たのか?)に対する網膜色素上皮細胞移植しかり、重症心不全に対する心筋シート移植しかり、パーキンソン病に対する神経細胞移植 しかり、どれも顕著な機能改善は示せていないのである。いや、顕著でなくても良い。少しでもいいが、それに対して数千万円もする治療費を税金から支出せよというのは無理なのである。
これからこの機能改善という治療評価にとって最も重要な項目が厳密に評価されるようになる。そうなると現在絶対善とされているiPS再生医療はまさにその終わりの始まりとなるのであろう。
 
注;眼科領域におけるiPS細胞由来の角膜上皮細胞移植は確実に機能を改善させる。しかし、この角膜上皮細胞移植に代わる治療法として羊膜移植といのがすでに確立されており、保険診療として行われている 。そして、その治療費がiPS細胞を用いたものよりも圧倒的に安価である。ほぼ同じ機能改善が期待される治療法でその治療費がかなり違えば安価な方が趨勢になるというのは当たり前だと思うが、現在のiPSという魔物に侵された日本の医療は間違った道を永遠に歩み続けるのかもしれない。