2014年1月30日木曜日

DAFT PUNKとSTAP細胞

ダフト・パンク(フランス出身のテクノ・ハウス・エレクトリカル・デュオ)は
第56回グラミー賞で最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞を初めとして5冠を達成した。

ブログに書くことないなあと思っていたところおめでたい話題が2つ入ってきたのでそれについて。
まずはダフト・パンクのグラミー賞受賞。長年応援してきたアーティストがグラミー賞を受賞するというのは、正直言ってどうでもいいのですが、まあ、不愉快ではないのでよしとしようというくらいです。そもそもグラミー賞自体にわたしはあまり興味はないのでどれだけ価値ある賞かもしらないのですが、おそらく映画のアカデミー賞に匹敵する音楽の賞なのでしょうからそれはそれは権威のある賞ということなのでしょう。でもやはりダフト・パンクのようなアーティストはそのような権威からはちょっと距離をおいて、その活動を続けてほしかったなあというまあダフト・パンクにとってはありがた迷惑に他ならない言うなればファン特有の独占欲みたいなものを感じてしまいました。
昨年リリースされたダフト・パンクのニューアルバム「Random Access Memories」はもちろんiTuneで購入して何度も聴いていますが、多くのゲスト・ミュージシャンが参加し、なんというか成熟したポップスという感じで、ダフト・パンクもえらい大人になったなあといい意味で感心してしまったので、このアルバムがグラミー賞を受賞するのは当然といえば当然なのかもしれません。このアルバムでわたしが一番気に入っている曲は、最後の「contact」というやつでこれは最も昔のダフト臭をひきずっている曲と思われます。
下にグラミー賞授賞式でのダフト・パンクのパフォーマンスの模様を映した動画を貼っておきます。めちゃくちゃカッコイイですwwwwなんとあのスティービー・ワンダーも参加してます。素晴らしい!会場には、ポール・マッカートニーやオノヨーコの姿も。
途中にマッシュアップで「Harder,Better,Faster,Stronger」が入ってきます。さすがです。


大人になったダフト・パンクもいいのですが、やはりわたし的には厨二病的なダフト・パンクにより好感がもてますwww。また、サマソニに来てくれないかなあ・・・。

で、次のめでたい話題はSTAP細胞について。
昨日、マスコミで大々的に報道され、わたしも知ることになりました。当該論文はどうやら1月30日付のNatureに掲載されるとのことです。
確かに素晴らしい研究成果だと思います。万能細胞が、これまでES細胞から、そしてiPS細胞から得られていたものが、単なる外的刺激(pH5.7の酸性)により誘導されるというのはまさに驚きです。これこそある意味、細胞分化というものの解釈のコペルニクス的転回に繋がる大発見といえるような気がします。その本質という点では、iPSよりも凄い!というのがわたしの感想です。
まあそれでもとにかく、万能細胞への誘導が証明されたのはマウス体細胞(それも生後1w)だけですので、これがヒト体細胞でも同じことが生じるかどうかは不明ですが、今後の展開に期待したいです。
このように基礎医学の世界での競争はまさに生き馬の目を抜くがごとく激しいもので、新たな知見がどんどんと出てきます。それはとりもなおさず我々は生物そのものをあまり理解できていないということです。そして、そのような状況のなかで、ある1点に集中投資することのリスクをもっと配慮した方がいいように思います。そうです、文科省のiPS研究への過度の投資、あるいは京大のiPSセンター設立へのわたしなりの疑問です。
iPSってそこまで価値あるか?
これについては以前のエントリーでもある程度書いてますので、STAP細胞が出てきた後での後出しジャンケンではないのは理解してほしいです。
勿論、iPSの素晴らしさを否定するわけではありません。でも、やはり現状のようにそこまで投資するか?そこまで話題にするか?というのが正直な気持ちです。
で、もしかしたらiPS陣営は逆に厳しい状況に陥るかもしれないのです。マスコミの手のひら返しはいつものことです。そうならないように、iPSに関しても応援は続けていく。でも、もうちょっと他の研究分野にも公平に研究費を投資しましょうとはいいたいです。

で、最後に書き忘れていた大事なこと。
つまりダフト・パンクとSTAP細胞に共通すること。
それはダフト・パンクが活動当初のバンド名「ダーリン」で あるライブの前座を勤めたところ、それがイギリスの音楽雑誌メロディーメーカーのレビューで「daft(愚かな)punk」と酷評を受けたそうで、ダフト・パンクはその酷評をそのまま自分たちのユニット名として使って、そしてここまで活躍するに至ったという姿とSTAP細胞のNature掲載論文のファーストオーサーである小保方さんが当初はその論文がNatureのreviewerから「生物細胞学の歴史を愚弄している」といわれrejectされ、それにも負けずデータを蓄積追加してacceptまでこぎつけたその姿は似ています。
まあ物語としてはよくあるパターンですがwwww
しかし、いずれにしても素晴らしい結果につながりよかったですねと賛辞を送りたいです。

 ということでなんとか1月にもうひとつエントリーできました。乙。

2014年1月8日水曜日

「Gravity」は「2001年・・」を越えた?

『Gravity』は、アルフォンソ・キュアロンが監督し、彼の息子ホナス・キュアロンと共同で脚本を執筆した。
製作費は1億ドルであり、デジタルで撮影された。またポストプロダクション時に3Dに変換される。

映画のジャンルのなかで一番好きなのは言うまでもなくSF映画であり、わたしがこれまで観てきた映画のなかでもSF映画の数が際立って多いと思います。そして、そのSF映画のなかでこれまでずっーーーーーーーーーとベスト1であり続けたのが、キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」でした。この映画を初めて観たのは、確か浪人時代で友人といっしょに観に行ったのですがかれはなにが面白いのかさっぱりわからなかったようで、一方、わたしはあまりの衝撃と感動で、それがわからないその友人を罵倒した思い出があります。そんな友人ですが同じ京大医学部に進学し、今は循環器内科の医者をやっています。
「2001年宇宙の旅」のすごいところは映像技術とラストの哲学的展開にあると思うのですが、映像技術に関してはまさにキューブリックのカメラオタクとしての辣腕が見事に発揮されたという感じで、いわゆる映像技術という面からとらえるとこの2001年に匹敵するものがあるとするとこれまでは「マトリックス」かなと思ってました。「マトリックス」はわたしのSF映画ベスト10に入る作品です。他のベスト作品は、「未知との遭遇」「エイリアン」「未来世紀ブラジル」「ブレードランナー」「ターミネイター」「惑星ソラリス」などがランクインとなります。ちなみにアニメは除いています。
で、その永遠のベスト1SF映画と思われた「2001年宇宙の旅」を凌駕したと思われた映画に出会いました!
それが「Gravity」です。敢えて邦題「ゼロ・グラビティ」とは書きません。それはこの邦題がおかしいから。映画の内容を知ってしまったものとしてはとてもこの邦題は使えません。
映像技術という点ではこの「Gravity」はほとんどがCGで作られているそうです。ヘルメットに反射する宇宙の様々な映像もすべてCGでそれはとても細やかな描写となっています。わたしはこの映画を観ている最中はそんなこと一切知らなかったので、カメラアングルいいなあとかカメラ演出うまいとか思っていたのですがそれがCGときき、単純にびっくりした次第です。わたしは気づかなかったのですが、ある場面ではヘルメットに撮影中のカメラクルーが間違って写るという場面もあるそうですが、CG制作ですからそんなことはあり得るはずもなく、それは敢えてそういうショットをCGで制作したということでなんという凝りようかと驚嘆するのみです。
で、この映像美、映像技術、映像の先進性という点で、「Gravity」は「2001年宇宙の旅」と比肩しうると感じました。
そこに加えて、ストーリーの素晴らしさ!
宇宙で遭難して地球に帰還するというまさに単純なストーリーなのですが、そこに「生」という根源的なテーマを絡ませてきて、そしてそれは最後に見事なメッセージと信じられないカットとして成功した!とわたしは感じました。
2001年ではその難解で哲学的なテーマと最終の映像にただただ驚愕するのみでしたが(そしてそれがなにより素晴らしかったのですが)、「Gravity」ではわからないのではなく、はっきりと監督のメッセージを受け取ることができた(それがある意味否定的要素になる可能性も十分あるのですが)ことが、わたしに「Gravity」は「2001年・・」を越えたかもと言わせる主因なのです。
とにかく最後のある意味科学的にはあり得ないショットがわたし的にはあまりに感動的でした。そしてそのあり得ないショットを確信犯的に撮ったキュアロン監督に拍手喝采です。
(このショットを「ハリウッド的」として貶める意見もわかりますが、敢えて敢えてわたしは肯定してしまうのですwww)
実際に「Gravity」と「2001年宇宙の旅」のどちらが映画史に大きな足跡を残すかはもう20年くらい待たなければわからないのかもしれません。まあ、2001年はその頃も確実に映画史のなかでは評価されているとは思いますが。でも現代の映画好きな若者でさえ「2001年・・」は退屈あるいは「長いは・・・」、「なんのことかさっぱり」、厨二病的などという反応を示いているという噂も・・・・。

 

 上に貼った動画は、この映画のspin-off作品としてホナス・キュアロンによって作られたものです。「Gravity」本編では、生の瀬戸際に立った宇宙船内の主人公の女性(サンドラ・ブロック)がたまたま地球上から発信された無線を捕らまえ、そこで交信する様を宇宙船内から映しているのですが、この動画は同じ場面を地球側から映しています。あの時、本編映画を観ながら向こうの地球側の情景はこんなんだろうなあと思っていたものが、心地よく裏切られる感じでこれもまた素晴らしいの一言です。そして、そんな動画を作成してそれをYouTubeにupして公開するというその手法も素晴らしいです。キュアロン監督さまさまです。
この「Gravity」は3D映像としても賞賛を得ています。キュアロン監督は絶対に3Dで観るべきと言ってます、確かにこの映画を3Dで観ると本当に宇宙空間にいるような感じにとらわれますし、宇宙空間にポツネンと浮かぶ人間がなんともたよりのない小さなものだと実感できます。
わたしがこれまで観た3D作品としては「アバター」や「パシフィック・リム」等があり、どれも素晴らしかったのですが、はっきりと言えるのは、「Gravity」の3Dはどの作品の3Dよりも目に優しかったです。つまり、観終わった後、それほど目に疲労を感じなかったです。 その点からも3Dが苦手という方にもこの作品は3Dで観ることをお勧めします。
また作中に数々のメタファーおよびSF映画へのオマージュが見受けられます。これらも素晴らしいです。

とにかく映画を観終わって、魂が震えるという感覚は滅多にないもので、前回は「愛のむきだし」まで遡ります。それだけ貴重な体験をさせてくれた「Gravity」に感謝感謝です。