2014年1月8日水曜日

「Gravity」は「2001年・・」を越えた?

『Gravity』は、アルフォンソ・キュアロンが監督し、彼の息子ホナス・キュアロンと共同で脚本を執筆した。
製作費は1億ドルであり、デジタルで撮影された。またポストプロダクション時に3Dに変換される。

映画のジャンルのなかで一番好きなのは言うまでもなくSF映画であり、わたしがこれまで観てきた映画のなかでもSF映画の数が際立って多いと思います。そして、そのSF映画のなかでこれまでずっーーーーーーーーーとベスト1であり続けたのが、キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」でした。この映画を初めて観たのは、確か浪人時代で友人といっしょに観に行ったのですがかれはなにが面白いのかさっぱりわからなかったようで、一方、わたしはあまりの衝撃と感動で、それがわからないその友人を罵倒した思い出があります。そんな友人ですが同じ京大医学部に進学し、今は循環器内科の医者をやっています。
「2001年宇宙の旅」のすごいところは映像技術とラストの哲学的展開にあると思うのですが、映像技術に関してはまさにキューブリックのカメラオタクとしての辣腕が見事に発揮されたという感じで、いわゆる映像技術という面からとらえるとこの2001年に匹敵するものがあるとするとこれまでは「マトリックス」かなと思ってました。「マトリックス」はわたしのSF映画ベスト10に入る作品です。他のベスト作品は、「未知との遭遇」「エイリアン」「未来世紀ブラジル」「ブレードランナー」「ターミネイター」「惑星ソラリス」などがランクインとなります。ちなみにアニメは除いています。
で、その永遠のベスト1SF映画と思われた「2001年宇宙の旅」を凌駕したと思われた映画に出会いました!
それが「Gravity」です。敢えて邦題「ゼロ・グラビティ」とは書きません。それはこの邦題がおかしいから。映画の内容を知ってしまったものとしてはとてもこの邦題は使えません。
映像技術という点ではこの「Gravity」はほとんどがCGで作られているそうです。ヘルメットに反射する宇宙の様々な映像もすべてCGでそれはとても細やかな描写となっています。わたしはこの映画を観ている最中はそんなこと一切知らなかったので、カメラアングルいいなあとかカメラ演出うまいとか思っていたのですがそれがCGときき、単純にびっくりした次第です。わたしは気づかなかったのですが、ある場面ではヘルメットに撮影中のカメラクルーが間違って写るという場面もあるそうですが、CG制作ですからそんなことはあり得るはずもなく、それは敢えてそういうショットをCGで制作したということでなんという凝りようかと驚嘆するのみです。
で、この映像美、映像技術、映像の先進性という点で、「Gravity」は「2001年宇宙の旅」と比肩しうると感じました。
そこに加えて、ストーリーの素晴らしさ!
宇宙で遭難して地球に帰還するというまさに単純なストーリーなのですが、そこに「生」という根源的なテーマを絡ませてきて、そしてそれは最後に見事なメッセージと信じられないカットとして成功した!とわたしは感じました。
2001年ではその難解で哲学的なテーマと最終の映像にただただ驚愕するのみでしたが(そしてそれがなにより素晴らしかったのですが)、「Gravity」ではわからないのではなく、はっきりと監督のメッセージを受け取ることができた(それがある意味否定的要素になる可能性も十分あるのですが)ことが、わたしに「Gravity」は「2001年・・」を越えたかもと言わせる主因なのです。
とにかく最後のある意味科学的にはあり得ないショットがわたし的にはあまりに感動的でした。そしてそのあり得ないショットを確信犯的に撮ったキュアロン監督に拍手喝采です。
(このショットを「ハリウッド的」として貶める意見もわかりますが、敢えて敢えてわたしは肯定してしまうのですwww)
実際に「Gravity」と「2001年宇宙の旅」のどちらが映画史に大きな足跡を残すかはもう20年くらい待たなければわからないのかもしれません。まあ、2001年はその頃も確実に映画史のなかでは評価されているとは思いますが。でも現代の映画好きな若者でさえ「2001年・・」は退屈あるいは「長いは・・・」、「なんのことかさっぱり」、厨二病的などという反応を示いているという噂も・・・・。

 

 上に貼った動画は、この映画のspin-off作品としてホナス・キュアロンによって作られたものです。「Gravity」本編では、生の瀬戸際に立った宇宙船内の主人公の女性(サンドラ・ブロック)がたまたま地球上から発信された無線を捕らまえ、そこで交信する様を宇宙船内から映しているのですが、この動画は同じ場面を地球側から映しています。あの時、本編映画を観ながら向こうの地球側の情景はこんなんだろうなあと思っていたものが、心地よく裏切られる感じでこれもまた素晴らしいの一言です。そして、そんな動画を作成してそれをYouTubeにupして公開するというその手法も素晴らしいです。キュアロン監督さまさまです。
この「Gravity」は3D映像としても賞賛を得ています。キュアロン監督は絶対に3Dで観るべきと言ってます、確かにこの映画を3Dで観ると本当に宇宙空間にいるような感じにとらわれますし、宇宙空間にポツネンと浮かぶ人間がなんともたよりのない小さなものだと実感できます。
わたしがこれまで観た3D作品としては「アバター」や「パシフィック・リム」等があり、どれも素晴らしかったのですが、はっきりと言えるのは、「Gravity」の3Dはどの作品の3Dよりも目に優しかったです。つまり、観終わった後、それほど目に疲労を感じなかったです。 その点からも3Dが苦手という方にもこの作品は3Dで観ることをお勧めします。
また作中に数々のメタファーおよびSF映画へのオマージュが見受けられます。これらも素晴らしいです。

とにかく映画を観終わって、魂が震えるという感覚は滅多にないもので、前回は「愛のむきだし」まで遡ります。それだけ貴重な体験をさせてくれた「Gravity」に感謝感謝です。